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【猫説】今昔物語

猫が織りなす不思議な世界の物語

【猫説 今昔物語】けづくろい

うちの師匠は猫楽といいまして,ひとっところに落ち着くことができないかたでして,いつもその師匠である,つまりあたしの大師匠にあたる猫六に怒られていたそうです。まぁ,今でもそうなんですがね。
猫六はとても身だしなみにも厳しい方で,ちょっとだらしのなく毛づくろいもろくすっぽしない猫楽をよく叱っては,しっかりと毛づくろいさせていました。これはそんな猫楽のお話です。

まだ,猫楽が駆け出しのころ,前座として高座に上がったところ,右耳の後ろの毛がはねていたんです。それを袖で見ていた猫楽が,ずっと陰に隠れながら,猫楽に毛のはねていることを気づかせようと,右耳の後ろの毛づくろいをしていたんです。そんなときに限って,猫楽の噺が長時間にわたるもので,脇で右耳の後ろを毛づくろいし続けた猫六の毛がすっかりはげてしまったそうです。

いや,話はこれだけです。え? オチがないじゃないかって。そりゃそうですよ,初めに言った通り,落ち着きのない猫楽の話なんですから。